実録?
カコスミ探索記





−○月12日19:00、名古屋市某所−



TEL@の携帯に、情報部員HIROSHIからメールが入った。

「中津川にホテル廃墟発見しました。物件は中規模でイイ具合に痛んでいますが、DQN未進
入で保存状態は良好。ルートは国道○○号と県道○○号の交差点から北上、温泉の大きい
看板が見えたら次を左折、山道を頂上まで昇って、下り始めたら電話ボックスの交差点を右
折、その先の藪の中にあります。マップルの座標だと49Pの5のAです。」

TELは丁度、その日の最後の仕事の帰り道だったので、自宅への道に切り替えながら、その
メールをYOCHIに転送した。



TELが自宅へ帰り、ガレージで車を乗り換えた所でYOCHIからメールの返信が返ってきた。


「その物件は旧○○グループ経営だった観光ホテルで、その会社は92年に更生法適用。
その後債権は某金融会社に移ったがその後債権放棄。そのまま放置されている物件。」


愛車BMWから目立たないカローラバンに乗り換えたTELは、提携グループに連絡した後、す
ぐにpcfxにメールした。


「緊急探索。21:00に東新町のデニーズに集合。今回のターゲットは岐阜のホテル廃墟。
 メンバーはYOCHIと覚王山ルインズのメンバー4名。C装備持参の事。以上。」


間髪を入れず、pcfxから返信が来た。


「了解。しかしC装備はもういい。」





−21:00 名古屋 東新町 デニーズ駐車場〜現場−


時刻丁度にメンバー全員が集合した。各々の車を近くのパーキングに駐車し、TELとYOCHI
のカローラバン2台に分乗。そのまま中津川へ向かった。

車載無線で物件情報を周知。地図を確認しながら、途中のコンビニで買った食事を取りながら
現場近くへ急行した。

今回はカコスミと覚王山ルインズという探索チームの合同だ。以前から合同の話があり、今回
時間が調整できたので、彼らとは初の合同となった。

車載無線で自己紹介や情報交換などを済ませ、カコスミの探索ルールを守ってもらう事を確認
した。

そして車内でTELが用意した作業服と安全ヘルメットを全員が着用。カローラバンと作業服で
建設作業員に化けたメンバーだった。





−22:20 岐阜県 中津川市 某所−


現場近くの公園で一旦車を降り、最終ブリーフィングを行う。TELが話を進める。


「今回は人気のない山中の物件だが、万一の事を考え、サイレントエントリーで進入する。
 装備はC装備で・・・」


そこでpcfxが口を挟んだ。


「C装備はもういい。」



TELとpcfxで先に現場周囲に斥候に出た。そこから公園に戻って、ブリーフィングの続きだ。


「装備は通常装備。チームリーダーは自分。レッドチームはYOCHIと覚王山ルインズの
 男性チーム2名。ブルーチームはpcfxとルインズの女性2名。各自携帯電話は今すぐマナー
 モードにしてくれ。・・・・・・・・・いいだろう。レッドチームは周囲や物音を警戒。ブルーチームは
 残留物チェックを担当してくれ。写真撮影は自分が担当する。

 今回の物件は4階建て。エントリーポイントは北側の隅の非常階段の2階部分。非常階段は
 足音を立てないように。
 
 西側は道路に面していて、東側は住宅地から視認できる距離にあるので、ライトやフラッシュ
 の方角に注意するように。
 
 また、万一野良人と遭遇した場合は声を出さず、手で合図するように。サインは右手で指を
 二本立てて振る合図だ。
 レッドチームは、もし我々以外の侵入者を感知したら速やかに指を広げて腕を回す合図を。
 
 脱出ルートは二か所。進入路の非常階段と、裏庭に面する階段だ。万一の場合は各自脱出
 し、この公園集合の事。探索時間は45分とする。また、廃墟内は火気厳禁だ。ライターなど
 は車に置いて行くように。
 
 その他、音を立てそうな物やガラスの破片は極力踏まないように注意。
 
 それでは各自、装備点検。」


そして懐中電灯の電池やデジカメの電池、安全靴の確認等を済ませたメンバー達は、各々の
チーム単位に固まって進入を開始した。





−22:50 廃墟進入−


非常階段2階から進入を開始。先頭はTEL。次にブルーチーム、しんがりはレッドチーム。

館内の階段を一旦1階まで降り、そこから順に上へと探索する予定だ。

1階のフロント前ホールでレッドチームが散開し、外に注意を払った。その間、ブルーチームが
残留物をチェックしてTELに報告。それをTELが順に撮影していく。pcfxはその様子を注意深
く観察し、TELの撮影アングルやピントに口を挟んだ。笑いをこらえながら、目は執拗にホテル
のパンフレットを隅々まで読んでいるYOCHI。


そうして探索は進んでいき、3階の大浴場手前まで来た時だった!レッドチームのメンバーの
1人が、指を二本立てて腕をしきりに振り始めたのだ!

pcfxはブルーチームのメンバーの女性二人を最後尾に移動させ、TELとYOCHIが大浴場の
手前の客室322号室に忍び足で入って行った。そして部屋からTELと誰かの話し声が漏れ聞
こえてくる。



・・・・・TELが野良人と交渉を終わり、問題なく探索は続行された。覚王山ルインズのメンバー
の1人がTELに訊ねた。

「どんな交渉したんスか?」

TELはニヤリと笑い、ただ指でOKマークを作るだけだった。




大浴場での撮影も終わり、最後の4階に上がったその時、またしてもレッドチームの1人が、
今度は指を全部広げて腕を回し始めた。
全員、窓側の影から階下を覗き込む。すると、一台の車がホテルに横付けしている。


・・・・・そして程なく、階下から人の話し声が聞こえてきた。声からして若い男女のようだ。
その注意力のなさ、遠慮のなさから、DQNかキモラーのようだった。


pcfxは手で合図して、裏庭側の脱出路にブルーチームの女性メンバーを連れて先に向
かった。TELとレッドチームは4階の事務所に入って、内側から鍵をかけて潜んだ。




TELの無線機のバイブが3回鳴り、ブルーチームは無事集合場所に避難した事を告げた。
後から進入してきた連中は、まだホテル内を徘徊している。

その後4階まで昇って来たので、連中の話し声がハッキリ聞こえてきた。



「・・・・・この辺、なにか感じるわね。」

「え!感じますか?悪い波動ですか?」

「う〜ん、これは動物霊ね。たぶん。」




・・・どうやら心霊系らしい。


潜んでいるTELの鼻に、プーンと線香の匂いがしてきた。どうやら供養を始める気らしい。
とりあえず危険はないようなので、TELはpcfxの無線に信号を送った。間もなく戻って来る
だろう。


TELが事務所から出ると、心霊系は一瞬ギョっとした様だったが、TELがペコリと頭を下げる
と、相手も恐る恐る頭を下げた。

TELが何度か合同した事のある、心霊系サイトの女性管理人とその助手だった。



「変な所で会いますね、毎度毎度。」

「まあこういう集まりだから、会う所は大抵、廃墟ですな。」



しばしお互いに笑ったが、今までの合同探索から、廃墟系と心霊系は物件情報は共有しても、
価値観が違うので一緒に探索しない方がいいという事を経験しているので、お互いにそのまま
別行動になって別れた。


3階にpcfxが到着したようなので合流し、残された地下室を探索した後、集合場所に戻った。





−23:30 物件近くの公園〜集合地点−


集合場所で作業着を脱いで私服に着替え、すぐにその場を後にした。長くいてもいい事は何も
ないからだ。その後、話は車載無線で盛り上がり、パーキングに到着。そして解散となった。





−25:00 パーキングにて−


解散と思われたが、じつはカコスミの行動はここからが本番だった。
YOCHIがカバンから出した地図には、新たなる物件の地図が5物件ほどあったのだ。

かくして、一台となったカローラバンは、今度は西の方角に向かって高速道路に乗り上げて
いった。運転しながらTELが地図を見て言った。


「この物件、エントリーポイントはどこよ?」


YOCHIが資料を見ながら答えた。


「塀を越えていくしかなさそうだな。」


するとTELは目を輝かせて嬉しそうに言った。


「じゃあC装備が必要だな!?」


pcfxは、TELのデジカメのプレビューを見て眉間に皺を寄せながらも、今回は黙って頷いて
いたのだった。







end





*この話はフィクションです。実際にはこのような事は行われておりません。



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